自由研究:「何をやればいいか」は、こうして考えよう!
北海道の学校も夏休みに入りました。
ここ何年か、「学校の先生=宿題を出す立場」から
自由研究で悩まないための「ものの見方」を書いてきましたが、
私の文章では、すぐに役立つ答えがほしい皆さんの心は満たされないようで
毎年この時期になると
「自由研究で何をすればいいかわからない」という
私たち教師からみるとガッカリな発言が後を絶ちません…
そこで今年は、いつも私が伝えたいと思っていることを
もう少し直接役に立つ形で整理し、
これをみてくれた皆さんには、
「何をしたらいいかわからない」なんて言わずにすむ
「自由研究への取り組み方」をお話ししたいと思います。
長いので、先にまとめなどを…
●自由研究って何をするものなの?
①自由研究の目的は、自分が見つけた問題を自分で解決する経験をすること
②特に大事なのは「解決法を自分で考え、実際に試して、結果から何かを
得る」という科学的方法
③科学的に考えてさえいれば、テーマは何でもいい(=理科っぽいテーマに
する必要はない)
●「自分が成長できるテーマ」を決める3つのステップ
1,「解決すべき自分の悩み」をテーマにしよう
2,自分なりの「ゴール」を設定しよう
3,発表/提出時の形をイメージしてテーマを絞ろう
はじめに確認:そもそも自由研究とは何か?
私は中学校の理科教師なので、
おもに中学生の理科を中心にお話しを進めていきます。
(といっても、結局はどの教科も行き着くところは同じなのですが)
ところでこれを読んでくれているあなたは、
「夏休みの課題」は、何のために出されているか考えたことがありますか?
一応言っておきますが、
先生たちだって、夏休みの課題なんか、できれば出したくはないのです。
だって、先生方は夏休みを
「学校の時間割がなくても自分で勉強をする成長の場」だと思っているから。
…だけど「夏休み」という言葉が誤解を招くのか、
「休みだから」という理由で、全然勉強しない人があまりに多い…
それで、「ホントは嫌だけど、何もしないまま過ごされるよりはマシ」という理由から
「やってほしい最低限のこと」として課題を出しているのです。
(もちろん、そうなる前にちゃんと時間をとって
「夏の計画作り」とか、「学習相談」などをやっているはずですけど)
さて、だとすると
自由研究で「やってほしい最低限のこと」とは一体何なのでしょう?
それはズバリ、
自分が見つけた問題を自分で解決する経験
なのです。
つまり
・問題を自分で見つけること
・解決方法を自分で考えること
の2つが大事なのです。
「何をやるか」はそれほど大事じゃなくて
「とにかく自分でやる」ということがとても大切なのです。
それは、こうした課題が
現実に直面するような
「決まった答えのない問題(たとえば人間関係とか)」を解決するための練習として必要だ、
と先生たちが考えているからです。
だから、最近非常に多い
「自由研究で何をやったらいいか教えて下さい」なんて人に聞いたり
「インターネットで○○について調べてきました」などと、
見つけたものをまる写しするようなやり方は
キビシイようですが、そんなの宿題をやったうちに入らないのです。
だって、
自由研究をやる上で一番重要な「自分」が、どこにもないわけですから…
さて、次にふれておきたいことですが
理科の場合、先生によっては
もう少し親切に、自由研究の進め方を教えてくれるかもしれません。
たとえば
①「テーマ」を決めたら
②それに対する「仮説」を立てて
③仮説をたしかめるために「実験」「観察」を行い
④「結果」を示して
⑤それをもとに、わかったことを「まとめ」る(=考察する)
といったようにです。
では、自由研究では実験や観察をやればいいのでしょうか?
答えは…やればいいってもんじゃない、です。
実験自体は悪いことではありませんが、
それはあくまでも「仮説をたしかめるため」のもの。
実験することが目的になっちゃってるのでは、
やっぱり宿題をやったうちには入らないのです。
「仮説」という言葉がわかりにくければ、
今のところは「自分で考えた解決法」と読み替えてください。
さっきも書いたように
まず自分なりのテーマ(解決すべき問題)がちゃんとあって、
それを解決する手段として実験があるという位置づけが大事です。
さらにいうと、
自分が向き合う問題の種類によっては、
実験じゃない解決法だっていくらでもあり得るわけです。
もっというと
こうした手順さえ、きちんとふんでいるなら
理科の教科書に出ているような内容じゃなくたって全然かまわないのです。
また、私の説明が未熟なせいか
何割かの人には、いくら説明しても次のことを理解してもらえず
いつも悔しい思いをしていますが
教科書の内容を覚えたり、問題演習をやったりして理科の成績を上げることと
科学的な発想で物事をとらえる訓練をすることは
言葉の上ではどちらも「理科の勉強」ですが
その中身は全然ちがうものです。
自由研究に必要なのは、断然後者。
教科書的な内容から出発することも一つの方法ですが、
ここはちょっぴり冒険して
理科っぽくないテーマを科学的に解決することにチャレンジしてみましょう。
(ちなみに、最近出た本のなかで、
理科っぽくないテーマに科学的発想で取り組んだ例としては
岡田斗司夫さんという人が書いてベストセラーにもなった
『いつまでもデブと思うなよ』などが参考になるでしょう。
「自分はなぜ太っているのだろう」という疑問をきっかけに、
自分の食生活を観察して、最後にはダイエットを成功させてしまった
というドキュメンタリー(?)です。実用書としてもおすすめです)
●長くなったので、ちょっとまとめ。
①自由研究の目的は、自分が見つけた問題を自分で解決する経験をすること
②特に大事なのは「解決法を自分で考え、実際に試して、結果から何かを
得る」という科学的方法
③科学的に考えてさえいれば、テーマは何でもいい(=理科っぽいテーマに
する必要はない)
「何をやるか」は、こう決めろ!
さて、今度はさらにもう一歩進めて、
もうちょっと実用的な話をしたいと思います。
それはズバリ、何をやったらいいかを自分で決めるコツのようなもの。
こういう切り口のアドバイスって、意外と少ないようなので
ぜひ一度読んでみて下さい。
「自分が成長できるテーマ」を決める3つのステップ
1,「解決すべき自分の悩み」をテーマにしよう
「自由研究の進め方」とか「テーマの決め方」的なアドバイス集の中に
「身のまわりのことがらに「なぜ」と疑問を持ってみよう」
みたいなことが書かれているのをよく見かけます。
…確かにその通りなんですけど、
そう思える人なら、たぶん自由研究のテーマで悩むことはないはずですよね。
本当に悩んでいる人って、
身のまわりに目を向けてみたって「なぜ」とは思えなかったり
何に疑問を持てばいいのか、見当もつかないから悩むんじゃないかと思います。
または、目の前の宿題にいっぱいいっぱいで、そこまで考えられないとか。
普段気にもかけていないことを宿題だからといって無理やり疑問に思ったって
意欲的に取り組めるはずもないですから
ここは実際の研究活動をヒントに、自分のテ-マを決める方法を考えてみましょう。
「必要は発明の母」ということわざがあるくらいですから
研究をする人が取り組んでいる「研究テーマ」って
多くの場合「その人にとって解決すべき問題」であることが多いです。
つまり、自分自身で解決しなければならないからやっている、わけです。
(他の人から依頼されたテーマに取り組むこともあるけど、
その場合だって「相手からの依頼を解決する」という
自分自身の目的のために取り組んでいます…よね)
そうしてみると、
「(理科の)自由研究で何をやっていいのかわからない」状態というのは、
「自分には、理科では解決したい問題がない」ということなわけですよね。
だったら、宿題だからって、それらしく形だけ整えるのはもうやめて
長い目で見たときの自分の成長のために
「自分の悩み」をそのままテーマにしちゃったらどうですか?
たとえ理科の宿題だったとしても、
上の方で書いたとおり方法が科学的であれば
内容は理科っぽい実験なんかじゃなくてもいいんですから
(たぶん、職人気質の理科教師であればあるほど、
こういうテーマには共感してくれると思うのだけど)
今すぐ自分の悩みを思い浮かべてみましょう。
だれだって解決したいと思ってる悩みの一つや二つはあるでしょう…?
どうしても思い浮かばないのだったら、
例えば
「自由研究で、どんなことをやればいいのか、全然わからない」
とか。
(あ、全国で提出された自由研究がこればっかりだったらマズイから、
マネはしないこと! 自分で考えるのが自由研究の肝ですからね)
以降はこの「自由研究で、どんなことをやればいいのか」
をテーマにすることを例として、実際に宿題に取り組む方法を考えてみましょう。
2,自分なりの「ゴール」を設定しよう
さて、
一応、取り組むべきテーマは決まりました。
でも、さっき決めた
「自由研究で、どんなことをやればいいのか」は、
このままでは、テーマとしては、まだまだ不完全です…
「全然わからない」という悩みの状態を、そのまま文にしただけですから
これを
「どうなれば「解決」といえるのか」という
自分なりのゴールの状態を示す文に置き換えてみましょう。
そうすることで、
この悩み(=テーマ)を、自分がどうとらえているか
どんな方法で解決しようとしているかが、浮かび上がってきます。
言ってるだけではピンと来ないと思うので
実際に例をあげてみましょう。
悩みの状態 「自由研究で、どんなことをやればいいのか」
↓
ゴールの状態「自由研究で、どんなことをやるか自分で決める」
こんな感じです。
わずかな違いですが、こう書き換えたことで
やるべきことが「決める」ことだと言うことがハッキリしました。
研究につきまとうイメージって、
はじめは手探りで、取り組んでいるうちに
いつの間にか答えが浮かび上がって来るように思いがちですが、
問題の本質を見きわめて、
とりあえずでいいから、ゴールをきちんと決めてやることで
自分がどっちに進めばいいのかがわかるのです。
これ大事です。
進む方向だって、別に教えてもらわなくたって
自分で決められるのです。
ともかく、
「自由研究で、どんなことをやればいいのか」という研究のゴールは
次のように決まりました。
ゴール(=本研究の目的):自分の力で、自由研究でやることを決める
後は実際にやるだけ…ですが
もう少しだけ、ヒントをのせておきます。
3,発表/提出時の形をイメージして、テーマをさらに絞り込もう
「自由研究で何をやろう?」
という悩みがあって
「自由研究でやることはこれに決めた!」
という答えがあれば
自分の悩み自体は解決ですが、
このままでは研究になりません、よね。
答えも大切かもしれませんが、
私たちに必要なのは、
それをどうやって解決したのか、という
解決までの流れの方なのです。
「答え」というのは、その時限りの使い捨てですが
「解決までの流れ」が身に付いていれば
いつかまた悩みが生まれたときには
そのやり方を応用して、自分で悩みを解決できます。
自由研究では
答えだけじゃなく、
その研究(悩みの解決)で得た、本当に大切なものである
「解決までの流れ」を
形に残す工夫をしましょう。
さすがに長くなってきました…
以下に、形式別のまとめの形だけ例示しておきますので、
ここから先は、ホントに自分の力でやってみて下さい。
きっと、いつもとは違う体験ができると思います。
・例1:「自由研究テーマの決め方(レポート形式のまとめ)」
自由研究のテーマを研究可能になるまで絞り込む方法を、
今後も応用可能な形にまとめる
・例2:「自由研究ができるまで(図解形式のまとめ)」
自由研究で何をするのかきめてからテーマに沿った研究が完成するまでを、
掲示物にまとめる
・例3:「自由研究の参考文献リスト(調べ物形式のまとめ)」
自由研究のテーマを決めるときに参考になる本やwebサイトを用途別・
テ-マ別などに整理する
●ここまでのまとめ「自分が成長できるテーマ」を決める3つのステップ
1,「解決すべき自分の悩み」をテーマにしよう
2,自分なりの「ゴール」を設定しよう
3,発表/提出時の形をイメージしてテーマを絞ろう
ついでに…今どき流行の「地球温暖化」について
これ多いですよね。
ホットな話題だし、地球規模の環境変化は人間にとっても影響が大きいから
(影響といっても、悪いことばかりじゃないですよ、実際は)
このテーマで自由研究するな、とは言わないけれど、
ちょっと一言。
「温暖化を防ぐために一人ひとりがもっと節約しよう」とか
「原子力発電はCO2を出さないから、温暖化対策に適している」とか
「CO2を減らせば温暖化が止まる」とかいった
世間にはびこる迷信をネットからまる写ししちゃう前に
ゲームに出てくる悪の大ボスじゃないんだから
CO2が減ったからって温暖化が止まって全て解決…なんかはしないことや
(このへんは事情が複雑だから、多面的に物事を見る練習にはなるかもしれない)
原子力発電は確かにCO2は出さないかもしれないけど
発電するためには火力発電(石油)とは比べものにならない大量の熱が出るから
地球はかえって温暖化してしまうことや
(しかも未だに解決されてない、「放射性廃棄物」の問題だってある)
節約して多少問題を先送りしたって、結局、資源を使っていることには変わりないんだから、じつは温暖化の防止にはなってない…ことくらいは
常識として知っておいてもいいと思う。
関心を持つべき課題の一つであることには違いないけど
今は、一部の安直な意見が一人歩きしちゃって
何がホントだかわからなくなってしまっているから
温暖化についてきちんと調べることは、とっても難しいことなのです。
みんなが注目してるし、情報も多いから
インターネットでちゃちゃっと調べよう…なんていう考えで取り組みはじめると
すぐにインチキ情報をつかまされ、それで調べた気になっちゃって
先生から寂しそうな視線を向けられてしまうことになるかも。
それなりの覚悟を持って、きちんと自分なりの意見を組み立てるのであれば
それはそれで、やりがいのあるテーマだと思います。
…でも、ここまでこの文章を読んだ人なら
もうわかっていますよね。
地球温暖化は「あなたが解決すべき自分の悩み」ですか?
おまけ:どうせだから、これも読んでほしい(過去のエントリ)
●自由研究やるのは何のため? ~宿題を出す側のホンネ
http://nozomilk.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/post_7957.html
●自由研究:何をやればいいか…は大まちがい!
http://nozomilk.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/post_026c.html
●自由研究のポイントは「自由」じゃなくて「研究」…?
http://nozomilk.cocolog-nifty.com/blog/2006/08/post_f989.html
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